悪いことができるようになっているのが悪いのか

1.

私は基本的には「悪いことをする人が悪い」と考えるので、Gumroadを悪用する人がいるなら、「その人が悪い」という。具体的には例えば、Gumroadが販売されている商品についていちいち「他者の著作権を侵害していないか」を審査するような仕組みが必要だとは考えない。

Gumroadは利用規約(2012年2月11日版)において、>>violate any laws, third party rights or our policies<<を禁止している。Gumroadの利用者は、あらゆる法令、第三者の権利、Gumroadの規則に反することをしてはいけないわけだ。

ならば残る問題は、この利用規約が空文になっていないかどうか。現状、著作権侵害等の相談・通報フォームは整備されていないが、メールでの問い合わせには応じている。あとは著作権侵害事案への実際への対応を見て考えたい。

2.

実際問題、権利者に無断で作られた二次創作あたりは、当たり前のように流通するのだろう。他者の著作権に抵触するタイプの同人誌が大規模に委託販売されている状況、即売会のイベントに万単位の人が集まる状況などから類推すれば、Gumroadだけが潔癖であり続けられるとは考えにくい。

二次創作などであれば、ほぼ間違いなく権利者の許可を得ていないと考えられる商品も、第三者による通報だけでは基本的に消えないだろう。

それは問題といえば問題なんだが、私の感覚では、まずデッドコピーの根絶が課題だと思う。例えばニコニコ動画の場合、ジャンル別の日間トップ10にCD音源を丸ごとコピーした動画が顔を出すことがある。チェックコストが有限なのはわかるが、これほど目立っている動画は、自主的に権利関係のチェックをしてほしいと思う。それが蟻の一穴になって際限なくチェックコストが膨らみかねない……という懸念はわかるが、通報待ち限定というスタイルでよいとは、私は思わない。

Gumroadにおいても、デッドコピーを全てシャットアウトするのは無理だと思うが、デッドコピーがたくさん売れている状況が明らかになった場合、それを放置しないでほしいと思う。どこかに線を引いて、とくに問題になっているデータについては、権利者の通報を待たずに、権利処理の仕組みを動かしてほしい。

なお、私は「有料だからとくに悪質」とは考えていない。公式の有料配信だと錯覚させるようなら「とくに悪質」だが、そうでないなら、むしろ有料の方が大勢に広まらないだろうから、実質的には害が少ないと思う。無料で数万人にバラ撒く方が、多くの場合において、実質的な害は大きいのではないか。

3.

Gumroadの話題性を見て即座に日本で開発されたサービスがameroadだ。利用規約や多言語対応などは弱いが、商品の取り扱いと売買の仕組みは本家よりしっかりした作りになっているのがすごい。

いまameroadでいちばん売れているのが岩崎啓眞さんの『イースI・II製作メモ』だ。リンク先を見ればわかるが、その表紙や一部の挿絵には、ゲーム中に登場するキャラが描かれている。これは権利者の許可を得て公開された二次創作のイラストなのだろうか?

個人的には、これは無断で制作・公開されたイラストだと仮定した上で、「『イースI・II製作メモ』のameroadでの流通は黙認されてほしい」と考える。だが、「権利者が削除申請をしたならば、速やかに削除されるべき」とも考えている。

なお『イースI・II製作メモ』にはゲームの画面写真もいくつか入っているが、それらは引用の要件を満たしていると私は判断した。