「共助」に頼るまいとした結果は

1.

金持ちになっても母親が生活保護を受給し続けていることを看過していた芸人が、テレビやネットで批判されているのだそうだ。
はてブ方面だと「自助→公助」の2段階制を支持する方が目立つ気がする。でも世間では「自助→共助→公助」の3段階制に、まだまだ大きな支持があるように思う。しかし本音ベースでは、「共助より公助の方が精神的にラク」と感じる人が次第に増えつつある。そのあたりの、本音と建前のねじれが生んだ事件ではないかと思った。
もともとは公助に頼ることの方が「申し訳ない」という気持ちが強くて、身内に助けを求める方が心情的に自然だったのではないか。3段階制は、個人にとっても政府にとっても都合がよかったのだと思う。
ところが現在では、家族を頼る方が心理的に負担が大きく、市役所に相談する方が気楽。それは、家族は相変わらず容赦なく感情をぶつけてくるが、現代の市役所は市民の悪意を9割方遮断するからだろう。無論、変わったのは役所だけで、世間は変わっていない。注目を浴び、世間の悪意がダイレクトに伝わるようになると、「共助に頼る方がマシだった」と思い知らされる。
河本準一さんのお母さんは、息子に扶養されるのを嫌がって、生活保護の受給を継続していたのだという。自立心の発露の仕方を誤ったのか、コトの軽重を取り違えたのか……。

2.

かつて私は親に小遣いをせびるのが嫌で、「お金をほしがらない子ども」であろうとしていた。が、物欲は人並みにある。それで、泥棒をした。「えっ!?」と自分でも驚く愚かさだ。しかし思い詰めた人は、ときに善悪の基準を見失い、矛盾を押し通そうとして反社会的な行動を取ってしまう。