文法以前の問題

私は文法違反の多寡にはあまり興味がありません。一段階前の、「HTML とは何か?」というレベルで誤解が多すぎることだけで頭がいっぱいだからです。「文書の論理構造を明示する」という HTML の存在意義を全然理解してくれない方が多いので、私は疲れてしまうのです。

blockquote 要素の内容にテキストをべた書きすることへの批判などは、一見、文法違反への批判のようですけれども、じつは違います。ブロックレベル要素を引用するから blockquote 要素なのであって、べた書きのテキストを引用するなら q 要素を用いるべきです。単なる文法的な決まりごとをいいたいのではなく、あなたの用いようとしているものが何であるかということを、理解してほしいと思っているのです。

HTML は多くの初心者に「スタイル指定言語」としてしか理解されないという現実があります。わかりやすい、と定評のある多くの解説を読ませても、ダメです。講師が目を離すと、すぐに魔法が解けてしまいます。font 要素をじゃんじゃん使い、p 要素を br 要素で代替しはじめます。表示結果さえ意図通りになれば、裏で何が起きていようと気にしない。講習会の最終日にできあがった「ほーむぺーじ」を見る頃、私はもはや刀折れ矢尽き、もうこんなボランティアなんか土下座して頼まれてもやるものか、と思う。でも頼まれたら断れないわけで(それにしても、私みたいなヘンな講師を頼む方もどうかしていると思う)。

もちろん、HTML がスタイル指定言語だったとしても悩みは尽きないでしょう。ただ、悩みのレベルが一段下がることは間違いないと思います。少なくとも「HTML はスタイル指定言語である」という共通認識は確保できるはずですから。